ワシントン、2023年7月31日 ― 投資家や金融機関に保証を提供し発展途上国へのクロスボーダー投資を促進する多数国間投資保証機関(MIGA)は、2023年度に29ヶ国、40のプロジェクトに対し、64億ドルの新規保証を発行した。保証額はMIGA創設以来35年間で最高額となった。MIGAが直接支援した40のプロジェクトに加え、MIGAが管理する2つの信託基金によって1プロジェクトを支援した。
2023年度を通し民間投資家による発展途上国への投資を促すというコミットメントを堅持。クライアントやパートナーと協力し、保証を通し民間資金から57億ドルの資金を動員した。保証額の約27%は低所得国でのプロジェクトを支援し、19%は脆弱国や紛争の影響を受けた国に向けられ、28%は気候変動への取組みに寄与しており、これらの優先分野に対するMIGAの継続的な取組みを強く反映した形となった。
これらの保証は短中期で大きな開発効果を齎すことになる。プロジェクトを通しインターネットへの新規アクセスが4,000万人増加し、5,500万人が携帯電話のネットワークに接続できるようになった。また、年間1億2,800万ドル以上の税収がホスト国で見込まれ、8,700人を超える雇用が生まれ、さらには年間80万トンのCO2排出量削減が見込まれている。
「いくつもの世界的危機への対処から、増大する気候変動の脅威の緩和に至るまで、MIGAは非常に困難な環境の中でホスト国政府や民間部門と協力してきました。」とMIGAの俣野弘長官は述べた。「2023年度、MIGAは途上国のために記録的な額の民間資本を動員し、開発ニーズに効果的に対応し続けることができました。」
2023年度、MIGAはまたウクライナ危機に迅速に対応し、困難に直面している民間人を支援するために複数の取組みを展開した。この取組みには欧州復興開発銀行と協力して、必需医薬品、食料、燃料、肥料の流通に係る貿易金融リスクを戦争で荒廃した地域でカバーすることが含まれる。また、MIGAはウクライナの中小企業の流動性と運転資金を確保することを目的に国際銀行に対する保証をウクライナ復興・経済支援(SURE)信託基金を設立の上で対応した。尚、本基金(SURE)は日本からの2,300万ドルの寄付で発足し、イギリスから最大2,000万ポンドの資金提供を受けて規模の拡大が見込まれている。
気候変動資金は2023年度の優先事項であり、MIGAの気候変動ポートフォリオは2019年度末の53億ドルから2023年度末には84億ドルへと大幅に増加した。2023年度に気候変動を緩和し適応するため、24ヶ国32プロジェクトを支援の上、総額15億ドルの保証発行した。
気候変動プロジェクトの一つは、ソマリアで2.8メガワットの太陽光発電ハイブリッド発電所を開発するための投資会社及び太陽光発電イノベーターとの提携を含み、これはMIGAが同国で初めて保証したものとなった。このプロジェクトは、国民の半数未満が電力を利用できるよう大幅な追加電力を供給すると同時に、紛争の影響を受けた脆弱な状況に対しての民間セクターからの投資可能性を実現させる。この初めての取り組みは、類する地域・国においてエネルギーへのアクセスを促進しながら、より低コストでクリーンエネルギーを求める他の国際開発機関のモデルとなることが期待される。同様に、セントルシアにおけるMIGAの最初のプロジェクトでは、24,640個ものエネルギー効率の高いLED街灯を設置。エネルギーを節約し、排出量の削減に貢献している。
他方、数百万人のモバイルネットワークやインターネットアクセスを支援することで、発展の鍵となるデジタル化の重要性を強調すると共にとの取り組みも推進した。紛争に苦しむエチオピアでは、MIGAは10億ドルの保証を提供し、IFCと提携。エチオピア全土での4G及び5G通信の展開と運用を支援した。
世界の貿易の減速と保護主義の高まりを背景に、MIGAは初の貿易金融保証を発行し重要な一歩を踏み出している。この保証は最大2,000万ドルに相当し、ルワンダとの貿易を促進するためにキガリ銀行に提供された。このような保証を通した貿易支援は今後も同様に進めていく予定。
MIGAはまた、男女平等の推進に引き続き尽力し、女性が主導・所有するビジネスに資本を動員するうえで重要な役割を果たした。そのプロジェクトの一つは、コロンビアの零細・中小企業を支援するために行った、国営銀行、バンコ・デ・コルメシオ・エクステリア・デ・コロンビアS.A.(Bancóldex)への融資保証だ。これにより、新型コロナウィルス感染症パンデミック後の経済活動の回復を促進した。MIGAはこのような支援を拡大することで、包括的で持続可能な経済環境の促進を目指している。
多くの発展途上国は依然として新型コロナウィルス感染症のパンデミックによる長引く経済的影響と戦っている。MIGAの新型コロナウィルス感染症に対応した緊急枠を通し2023年度だけで23億ドルの新規保証を発行した。特別枠立ち上げ以来、66ヶ国、49プロジェクトが、総額99億ドルに達するMIGA保証の恩恵を受けてきた。この保証は、医療品や医療サービスの購入、政府機関を通じた信用補填、金融機関の資本最適化に活用された。
MIGAは2023年に創立35周年を迎えた。1988年の創設以来、MIGAは763億ドルの保証を発行し、123ヶ国、1,000件以上のプロジェクトをサポートしてきた。MIGAの三か年計画の最終年となり、この期間中に年間平均55億ドルを超える新規保証発行という偉業を達成することとなった。
多数国間投資保証機関(MIGA)とは
世界銀行グループの一機関として新興途上国への外国からの直接投資を促進する機関として1988年に設立。送金・兌換での制約、政府による契約不履行、収用、戦争及び内乱などのリスク軽減を支援するとともに、金融機関向けに信用補完を提供している。創設以来、MIGAは123の発展途上国において1000を超えるプロジェクトを実施し、760億米ドルの保証を提供、156,000人以上の雇用を創出。
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ワシントン:
Elizabeth Howton, (202) 458-5922, ehowton@worldbankgroup.org
東京:
多数国間投資保証機関 東京事務所, miga_tokyo@worldbank.org
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